The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Contents
Presenter Interview
Art bringing hope to Echigo-Tsumari  The ongoing journey of Fram Kitagawa
アートで越後妻有に希望を 北川フラムの大いなる旅
ジェームズ・タレル『光の館』
(2000年)
光の館
© ANZAÏ
クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン『最後の教室』
(2006〜2009年)
最後の教室
© H.Kuratani
──サポーターに関していうと、美大生を中心にした「こへび隊」が東京からたくさん越後妻有に入りました。資料によると第1回は延べ9440人(登録人数800人)が協働しています。
 最初から若い人たちと一緒にやるつもりではいましたが、大地の芸術祭がオーソライズされない状況が続くなかで、中山間地で農業をやっているお年寄りとは180度違う人間が入った方が事態は動くかもしれないと思った。それで何だかよくわからない、アートなんていうものをやっている若者を前面に立てました。これもまたさっきの赤ん坊の喩えと似ていて、180度違うから絶対初めはぶつかるのですが、アートという赤ん坊を前にしてみんなで乗り越えようする。違うほうがガンガン文句を言えるし、だけど若者もそれなりに郷に入れば郷に従うから、それが繋がりとして何かを生み出していった。似たもの同士だと逆にできなかったと思います。
 ちなみに越後妻有では、名前も知らない若者なのに「こへび」というだけで知事や代議士が出席している会議の司会をしても当たり前になっています。こへびと言えばフリーパスで、ちょっとした化外の人になっている。応援してもらえるものだから、とうとうこへびを騙って商売するヤツまで出てきた(笑)。
 
──10年前は、学生たちがこうしたフィールドワークをするのはとても珍しかったのですが、今ではどこのアートプロジェクトにも必ずといっていいほど学生たちが関わっています。大学が地域に開かれた運営や実践的な教育を目指すようになり、少子高齢化社会に直面している地域も学生のパワーに期待するようになった。北川さんは、千葉のニュータウンを舞台に、大学で美術や建築を学ぶ40近いゼミなどと連携して「アートユニバーシアード」と題したプロジェクトをプロデュースされたこともあります。
 こへびを経験すると目的意識が非常にはっきりする、と先生たちは言います。それはなぜかというと、大人と一緒に働くからです。3回目からは「おおへび」という大人のサポーターがたくさん関わるようになりましたが、彼らは仕事のない週末に越後妻有にやって来て夜中までこへびに教えたりしながら、彼らと一緒に働くわけです。本来こういうことでしか教育はありえない。最近は、海外からも来るようになり、今年は香港大学から30人が週3回ほど参加しています。
 足は完全に地域のなかにどっぷりと浸かっていても、アートは世界への窓をもっているので、自然とグローバルな意識でいられる。アートであるということにはそういう面白さもあります。

──空家プロジェクト、廃校プロジェクトに力を入れて大きな成果を出してきました。
 今はそんなに新しいモノをつくれる時代ではない。だけどまだまだ、役に立つ本当の意味のある建物はたくさんある。あるモノを活かし、新たな価値をつくろうということです。それと大地震で集落の中に空き家が増えたこともきっかけになりました。空き家があると本当に灯が消えたようになる。ましてや学校が廃校になるのはつらいものです。それを何とかできないかと思いました。
 越後妻有では、アーティストたちは場所にこだわり、場所の時間を活かそうと努力してきた。その中で決定的だったのが、2000年に旧清津峡小学校土倉分校で展開した北山善夫さんの作品です。北山さんは子どもたちのざわめき、遊び、それを見守ってきた地域の人々の気持ち、そういった時間を形象化した。アーティストは越後妻有でこういうことをやっているのだとよくわかりました。
 第4回では、アンソニー・ゴームリー、クロード・レベック、塩田千春などが空き家を使って頑張っています。空き家の場合、個人の所有物なので官費を使うことができず、僕たちが買い取ってプロジェクトに理解のあるオーナーを捜して資金を回収しなくちゃいけない。今もオーナーを募集しています。興味のある方はぜひよろしくお願いします(笑)。
 今回の主要プロジェクトは何といっても廃校です。地域に残った13の廃校をすべて生き返らせます。長期的な展望としてやれているのはまだ半分に満たないのですが、将来的には地域の人たちの力も借りてパーマネントなスペースに変えていきたいと思っています。
 旧東川小学校は2006年にクリスチャン・ボルタンスキーがジャン・カルマンと組んでパーマネントな作品にしましたが、今回はこれに新たな要素が加わります。来年、瀬戸内海の豊島で行われるボルタンスキーの新しいプロジェクトとして世界中で収録した心臓の音を使いますが、ここがその収録場所のひとつになります。また、新しい展開としては、鉢集落の人と田島征三さんの「絵本と木の実の美術館」や、コンサートピアニストの向井山朋子さんが1万枚の布を使ってインスタレーションする旧飛渡第二小学校、川俣正さんが美術によるまちづくりのアーカイブを展開する旧清水小学校の「インターローカルアートネットワークセンター」などがあります。越後妻有にはたくさんの大学が関わっていますが、今回から新たに京都精華大学が枯木又の廃校で山間集落の地域づくりの長期プロジェクトを展開することになりました。
 それと新潟県立安塚高校松之山分校という高校が危機に直面していて。30人入学する見込みが立たなければ廃校になってしまう。もう待ったなしの状況なのですが、僕らみんなが入学して高校生になれば支えられるんじゃないかと。面白いでしょ。それで大地の芸術祭と繋いで、こへびもおおへびもみんな高校生になって(笑)。今必死で交渉しているところです。
 
BACK
| 1 | 2 | 3 | 4 |
NEXT
TOP