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Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Art bringing hope to Echigo-Tsumari  The ongoing journey of Fram Kitagawa
アートで越後妻有に希望を 北川フラムの大いなる旅
水と土の芸術祭
新潟市で2009年にスタートしたアートによる地域再生の新プロジェクト。新潟市(人口81万人)は越後妻有地域のある新潟県の県庁所在地で、信濃川、阿賀野川という2つの大河を抱える日本一の穀倉地帯。2つの大河による恩恵と被害という「水と土」との営みによってもたらされてきた同市の歴史と知恵と文化をアートによって紐解き、市民みんなで共有するとともに、国内外に発信し、これからのまちづくりの礎にしていこうと企画されたもの。

招待作家、公募作家を含め60名を超えるアーティストの参加が決定。(1)立体交差(水位の異なる2つの川が交差している場所)や旧栗ノ木排水機場(耕作地の排水をするために作られた昭和23年に建設された近代農業の遺構)、廃村の記憶を伝える農家など、水と土の記憶が残る屋内外の場所で70作品あまりを展示するランドアート・プロジェクト、(2)市民が持ち寄った「ニイガタのタカラ」、信濃川・阿賀野川などからサンプリングしてきた水、1年かけて新潟各所で行った4000枚のフロッタージュなど、市民とアーティストが協働し、新潟の記憶をタカラモノとして展示する歴史文化再発見プロジェクト、(3)祭りや芸能、食文化などを掘り起こす地域の魅力発信プロジェクトの大きく3つを柱に、多彩な取り組みを半年にわたって展開する。

水と土の芸術祭2009
[会期]7月18日〜12月27日
[会場]新潟市美術館、新津美術館、新潟市歴史博物館、旧笹川家住宅、新潟市内各所
[主催]水と土の芸術祭実行委員会(実行委員長:篠田昭新潟市長)
[ディレクター]北川フラム
http://www.mizu-tsuchi.jp/
水と土の芸術祭
水都大阪
“水の都”大阪をテーマにしたアート・プロジェクト。大阪市の中心部に位置する堂島川・土佐堀川・木津川・道頓堀川・東横堀川によって形作られた水の回廊を活かし、大阪の都市再生を図るシンボル事業。主会場となる中之島では、竹による仮設建築物「水辺の文化座」が設置され、さまざまなアーティストによる参加体験プログラムと灯りのアートワークが展開される。

水都大阪2009
[会期]2009年8月22日〜10月12日
[会場]中之島公園・八軒家浜周辺、水の回廊、大阪市内各所
[主催]水都大阪2009実行委員会(会長:平松邦夫大阪市長)
[プロデューサー]北川フラム、橋爪紳也
[総合アドバイザー]安藤忠雄
http://www.suito-osaka2009.jp/
水都大阪
瀬戸内国際芸術祭
瀬戸内海の7つの島を舞台に2010年にスタートするアートトリエンナーレ。瀬戸内海は、日本列島の本州、四国、九州の大きな三つの島に囲まれた、東西約450km、南北約15〜55kmにわたる日本最大の内海。古来、海上交通路として栄えた瀬戸内海も、工業開発による汚染や島々の過疎高齢化など深刻な問題を抱えている。

1992年、現代アートの支援者として知られるベネッセコーポレーション会長の福武總一郎の肝いりにより、直島に美術館とホテルを複合したベネッセハウスが完成したのをきっかけに、直島は現代アートの島として注目を集めるようになる。2004年には安藤忠雄設計による地中美術館(運営:福武美術館財団)が新たにオープン。また、同じく瀬戸内海に浮かぶ犬島で100年前の精錬所の遺構を活かしたアートプロジェクトにも着手。瀬戸内国際芸術祭はこうした流れをさらに発展させたもので、豊かな景観と民俗芸能や祭りが残る島々の固有の文化・歴史に現代アートによって光を当て、島と瀬戸内海を再生することを試みる。

瀬戸内国際芸術祭2010
[会期]2010年7月19日〜10月31日
[会場]直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島+高松
[主催]瀬戸内国際芸術祭実行委員会
[会長]真鍋武紀(香川県知事)
[総合プロデューサー]福武總一郎 [総合ディレクター]北川フラム
http://setouchi-artfest.jp/
瀬戸内国際芸術祭
──越後妻有では、里山や棚田など自然との共生もテーマのひとつになっているように思います。
 自然との共生という言葉は嫌いなんです。僕は自然の摂理のほうが断然いいと思っていて、自然をコントロールするという意識があるなかで共にありたいなどというのはおこがましい。もっと始原に帰れと言いたい。
 
──地域に関わり始めた当初にそういう意識はなかったのではないですか。
 ええ、ありませんでした。でも今は本当にそう感じています。僕たちアートに関わる者は、表現がどうとか色々言いますが、そんなことはどうでもよくて、この一瞬に、この宇宙空間の中で生きていることが面白いんです。それはみんなひとりひとり違っていて、そのひとりひとり違っているというのがアートの本当の根拠なのだと思います。美術は個人の表現なのではなく、ひとりひとり違うということだけをやっているに過ぎない。それがものすごくよく判ってきました。
 それと、例えば富士山の高さを数字で測ることはもちろん重要だけど、数字では測れないものの見方、感じ方がある。色々なことを分断して、整理してとらえるより、直観的・生理的にとらえる方が正しいのではないか、それこそがアートが一貫してやってきた誇れるべきことなんじゃないかというのもよく判ってきた。それこそ自然の一部としてのもののとらえ方だと思います。

新たなプロジェクトに向けて

──今年は新たに新潟市で「水と土の芸術祭」がスタートします。
 越後妻有をやって気づいたのですが、こんな小さな国なのに日本の文化は多様でメチャメチャ面白い。それはなぜなのか。その理由は土地しかないと思いました。日本は2つの黒潮に囲まれた列島で、やたら湿度が高くて雨が降る。それであちこちに川、それも急流があるわけです。これはもう日本の特徴と言っていい。そういう土地で暮らしてきた僕たちのご先祖は、土地の性格みたいなものを熟知していて、例えば畦をつくる技術ひとつとっても、土地に対する深い知恵に裏打ちされていた。各地の土を採取して作品にしている栗田宏一の仕事を見ていて気づいたのですが、本当に日本の土の色は多様なわけです。特に新潟の土の色の多様性はすごい。地球は水の惑星といわれるけど、実は土の惑星でもある。
 そう考えていくと、新潟市は日本で一番長い信濃川と有数の水量を誇る阿賀野川を擁し、その2つの大河が水路を探して荒れまくり、攪拌されてきた土地ということになる。市内には海抜ゼロメートル以下の地域が4分の1くらいあって、最大で川より3メートルも低い所に土地がある。そういう土地、泥沼の中で日本一、いや世界一といってもいい米所をつくってきた。泥の中に腰まで使って稲を植えていたような土地だったのに、努力して今の平野をつくってきた。そういう写真や水害の記録、立体交差する川のような土木の技術など、新潟市には水と土の記憶がたくさん残っている。
 第1回の「水と土の芸術祭」では、お祭りや芸能まで含めて、そうした新潟の記憶をタカラとして言祝ぎたいと思いました。越後妻有の川上と川下という関係にある新潟市まで広げて、田んぼをつくってきた文化を言祝ぎ、チグリス川、ユーフラテス川、黄河、長江とか、文明をつくってきた世界の川や、新潟の川から海を通じて繋がっている北東アジアまで見据えて、僕たちの来し方、行く末を考えていきたいと思っています。

──北川さんは、東京と並ぶ大都市・大阪でもアートプロジェクトを展開されてきました。市内に残った近代建築で現代アートを展開した「大阪アートカレイドスコープ」(2007年、2008年)に続き、今年は「水都大阪」が立ち上がります。
 財界と行政が一緒になって、大阪再生のシンボリックなプロジェクトとして取り組むのが「水都大阪」です。大阪は、江戸時代まで遡れば、川と海という水運によって日本一の商都として栄えた地域です。1910年代までは東京よりも栄えていて、集まった富を橋などの社会資本に変えていった良さがある。そうやって頑張ってきた歴史のある大阪なので、「水」というのが再生を考える決定的なテーマになるだろうということになりました。それで今回は、ヤノベケンジ、椿昇など大阪を代表するアーティストや、DANCE BOXなどのNPOに協力してもらい、水辺を楽しむ100の方法というのをやります。中之島に竹で水辺の文化座を組んで、美術だけではなく、パフォーマンスや音楽などを色々やる。
 大阪というのはアジアの人たちも受け入れてきたし、外から流れてきた人たちが第二の人生を送れる場所だった。かつてはそういう人の坩堝だったからこそメチャメチャなエネルギーがあったんです。今ではその元気もなくなっていますが、そういう坩堝から生まれてくる市民力が復活するきっかけになればと思っています。

──今全国でアートプロジェクトが盛んに行われるようになっています。それをどう思われますか。
 他のことより多少は面白いよ、ということだからだと思います。アートというのはみんながどう考えてもいいものだから、無用の騒々しいものでみんなが繋がっていける。それがアートの決定的な効能であり、それが期待されているということでしょう。ただ、反対者がいる所でやった方がいいけど(笑)。
 
──2010年には、瀬戸内海に浮かぶ7つの島を舞台にした大規模なアートトリエンナーレ「瀬戸内国際芸術祭」がスタートします。これは、現代アートの支援者であり、瀬戸内海の直島、犬島でアートプロジェクトを展開してきたベネッセコーポレーション会長兼CEOで大地の芸術祭プロデューサーでもある福武總一郎氏と組んで行う一大プロジェクトです。福武氏は「文化・芸術による福武地域振興財団」を新たに設立するなど、その思い入れには並々ならぬものがあります。
 越後妻有で始まったのは何かというと「ギフト」ということです。みんなが少しずつ労働をギフトすることで、少しずつコミュニケーションを回復してきた。つまり、田舎というのはそういう復元力のある土地なんです。瀬戸内海の島々も同じで、復元力がある。誰でもおいでよ、労働すれば何とか食えるし、手伝ってやるぞ、第二の人生が生きられる場所だぞと。そういう場所として再生することができるのではないか。まあ、何十年かかるかわかりませんが、そういうことなんじゃないかと思います。
 
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