The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
A gateway to recognition for young musiciansLooking at Young Concert Artists in today’s music world
若手演奏家の登竜門 ヤング・コンサート・アーティスツの現在
──YCAは自立したアーティストになるように働きかけているのですか?

W:私たちがアーティストにできることは、YCAが彼らを選んだということは、特別なアーティストであると認めていることであり、それによって彼らに自信を与えることです。YCAが育もうとしているのは音楽的なことだけではなく、実演家として進歩するのに必要なことです。それは単に弾くだけの人であるのとは違います。人々がどうやってコンサートを開催しているのかを知り、その人たちにきちんと挨拶ができ、感謝し、演奏の機会があればすぐにその求めに応じることができる姿勢を整えておくことができるかどうかです。YCAには学生や観客にどのように接するかといったアーティストが行う教育プログラムもあります。これはYCAがどこよりも最初に始めたアウトリーチ活動です。

──それでは、今YCAが果たせる役割というか、ミッションをどのようにお考えですか?

W:一番大事な目標は、アーティストの卓越した才能を保つことです。私たちはコンクールではなく、しばしばコンクールよりも良いことをしています。ひとりのピアニストを選び、別のピアニストと比べるようなことはしません。例えば、2009年のオーディションではヴァイオリン奏者が4人選ばれました。それぞれ全く違います。YCAが彼らに言うのは「あなたたちは特別であり、自分の表現をもっている」ということで、ある意味これが最も大切なことだと思います。もちろん、その後のYCAによる最低3年のキャリアマネジメントのサポートや、ニューヨークやワシントンでのデビューコンサートに繋げることも大事ですが。

H:かつてのようにYCAが音楽業界の外に向かって力をもつのは難しくなっています。でも、若い音楽家に出来るだけの訓練と支援と助力をすることはできます。彼らは自分で自分を管理して、自分のキャリアに繋げるという方法をまず知りません。マネージャーがついたとしても、自分の行動には自分で責任を取らなければなりません。どんなに成功しても、何から何まで面倒を見てくれるマネージャーはほとんどいません。いくつもコンサートの機会をつくってくれますが、自分の時間管理は自分でしなければならないし、「イエス」「ノー」の言い方を知らなければなりません。ですから、私たちは若い音楽家にプロになるために必要なあらゆるスキルを教えています。
 有名な音楽院の先生であっても、そういうことを教えるのはあまり得意ではありません。先生はマネージャーではありませんし、若いアーティストに契約やビザから、税金や法律、留守電には返事を、レパートリーやプロフィールついて質問されたらどう答えるかなどについて教えたという経験もないでしょう。仕事としては当たり前の部分ですが、多くのアーティストは生まれつき得意とはいえません。それを私たちと学んでいくのです。

──最近は海外でもオーディションをされていますね。アメリカの団体がなぜ?

W:YCAの卒業生のひとりであるジョエル・シャピロがライプツィヒのメンデルスゾーン高等音楽院の教授になったころ、当時ドイツは東西統一を果たして数年が経っており、かつてグリーグやシューマン、ワーグナーといったドイツの偉大な作曲家たちが学んだ歴史と伝統ある音楽院には、ある種の活気が必要でした。
 彼はプロレクターという高等音楽院の芸術監督に選ばれ、YCAオーディションを同学院で行うことを決めました。ライプツィヒは地理的に中欧からも東欧からもアクセスしやすい。あまりお金のない若いアーティストにとってただCDを送るだけでなく、ヨーロッパの人の前で演奏する機会を与えられる。それが学院に人々の注目を集めることにも繋がると思ったんです。それから、別の卒業生のフランス人のピアニスト、マーク・ラフォーレは、同じことをパリでもやろうと言い出しました。それで、ライプツィヒとパリの両方でオーディションを年ごとに交互に行っていきました。このように素晴らしい卒業生がYCAを助けて始めてくれたおかげで、ヨーロッパやロシア、東欧諸国からの音楽家が加わり、評判が広がりました。

──4年前から東京でもシャネルタワーにあるネクサスホールでYCA Tokyo Festivalが始まりました。これも卒業生が関わってスタートしたのですか?

W:Tokyo Festivalはちょっと違います。YCA理事長のピーター・マリーノ氏が銀座のシャネルタワーの設計者です。彼はシャネル・ジャポン社長のリシャール・コラセとともに音楽をとても愛しています。というわけで、二人はこの建物でYCAが何かを行う機会をつくろうと決めてくれました。シャネルはここで行う音楽祭に大変篤い支援をくださっています。
 このような国際的なファッションの企業がクラッシック音楽のフェスティバル、しかも若いアーティストのそれを支援してくれることはたいへん稀です。おかげで、フェスティバルも成功を続けています。今では、日本の国内外のコミュニティーからの援助も受け始めています。幸いにも最初の年から、在日アメリカ大使館から支援を得ています。アメリカの団体が日本で活動するだけでなく、世界各地からアーティストを招いて、一緒に何かをすることに賛同してくれています。日本に根を下ろすフランスの会社が、アメリカ人と協力して国際フェスティバルをつくっているんです。

H:これは一種、有機的に起こっている巧まざる成長のようなものです。YCAに関わりをもってきた人たちが、こうした国際的活動を通じて、私たちを別の世界に連れ出してくれた。すべてYCAの外の人たちがみな、始めてくれたことです。私たちは新しいことをどこかで始める場合はそれぞれの場所にいる人に手助けしてもらう必要があります。「この素晴らしい計画実現のために、こんなアイディアがあるんだけれど……」「それはすごい! 実現のためにお手伝いします!」そんな具合にものごとが起こり、海外オーディションが実現し、Tokyo Festivalが実現した……さて、次は誰を手伝いましょうか(笑)。
 
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