The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Bangkok Theatre Network An organization sparked by a Thai version of Akaoni
タイ版『赤鬼』が契機となったバンコク・シアター・ネットワーク
プラディット・プラサートーン
バンコク・シアター・ネットワーク(BTN)
http://www.lakorn.org/about_BTN_eng.htm
──バンコク・シアター・ネットワーク(以下、BTN)について、もう少し詳しく教えてください。『赤鬼』の前には、違う劇団に所属しているタイの演劇人同士の繋がりはあまりなかったと聞きましたが。
 そうです。元々タイ人の俳優たちはエゴが強く、プライドも高いのであまり交流がありませんでした。しかも、いくつかの劇団が年1、2作品しか発表しない状態で、観客の数も限られている。そんな状態だと現代演劇を一般のタイ人に広めることはできません。それぞれが活動するだけでなく、もっと交流して、頻繁に作品を発表できる環境をつくることが大事だと思いました。それで、1992年頃に演劇のネットワークをまとめようと呼びかけことがあるのですが、失敗しました。その後もう一度やったのですが、それもうまくいかなかった。『赤鬼』が3回目のチャンスでした。日本公演のとき、野田さんを中心にみんなが集まり、毎晩パーティーのようで、昼も夜も共に過ごしました。こうして仕事だけではなく、人間同士の付き合い、交流が深まり、BTNをつくろうと初めてみんなの意見が一致しました。
 このネットワークが出来た背景として、もうひとつふれておかなければいけないのが、当時、国際交流基金のバンコク日本文化センター所長だった小松諄悦さん(現・渋沢栄一記念財団常務理事)の存在です。小松さんはタイ人よりも熱心にタイの演劇に興味をもってくださった方で、タイの演劇についての情報が必要になるとよく私に電話をくださいました。それで私も情報を集めるために、他の劇団と頻繁に連絡を取り合うようになりました。そうしている間に、私と他の劇団との間に信頼関係ができていきました。もし、こうした信頼関係ができていなければ、ネットワークはつくれなかったと思います。
 BTNは、まずマカムポンなど10劇団のメンバーで立ち上げました。その後12劇団になりましたが、今はまた10劇団に戻っています。積極的に活動しない劇団は除名するという決まりもあります。2002年に組織化しましたが、まだ正式な法人格をもったわけではありません。将来は財団化できればと考えています。また、個人会員としては、大学の演劇関係の教員(10大学から約30名)、報道関係者、ジャーナリスト約50名がメンバーになっています。会費は無料ですが、広報やセミナーなどに協力してもらっています。学生がフェスティバルやボランティアスタッフとして協力することで単位が習得できる大学もあります。
 BTNは会費制で運営されていて、特別会員(運営委員)が年間2,400バーツ(約6,500円)、一般会員が年間1,200バーツ(約3,250円)です。非常に安い会費なので、これだけで運営できるわけではなく、常勤職員もいません。事務所も知り合いの所に間借りしている状態です。ただ、実績を積んできたおかげで、今年からバンコク・シアター・ネットワーク・プロジェクトとしてタイ政府関係の組織から支援を受けることができそうです。

──BTNの目的は何ですか。
 重要な目的は、タイの演劇人と演劇界を強化することです。それを達成するために、観客、マスコミ、アーティスト、評論家、教育者、さまざまな立場の人たちに主要メンバーとして関わってもらっています。

──現在取り組んでいる主要な活動は何がありますか。
 中核事業として取り組んでいるのが、演劇の社会的認知度を上げるために約30劇団が参加して2002年からスタートしたバンコク・シアター・フェスティバルです。
 それ以外にも、年間をとおして、劇団や公演の運営に関するセミナーや演技や芝居に関するワークショップを行っています。違う劇団同士でコラボレーションを行い、作品を発表することもあります。今回、東京で上演する『農業少女』もその一例で、東京芸術劇場とBTNの共同制作であるだけでなく、違う劇団に所属しているタイ人の俳優同士のコラボレーションでもあります。

──今回のBTNと東京芸術劇場との共同制作について伺います。まずは経緯からお話ください。
 東京芸術劇場の副館長である高萩宏さんから、野田さんの作品を演出しないか、というお誘いをいただきました。それで私が直接演出するのではなく、タイの優れた演出家のチャンスになればと思い、BTNと相談し、今年の3月に野田さんを迎えてバンコクでワークショップを行いました。このワークショップの後、演出をしたいと申し出た人が7人もいました。その中で、私が特に、野田さんの作品を演出するとおもしろくなるだろうと思ったのは、ナット・ヌアンペーン、ニコン・セタン、ダムケン・ティタピヤサックの3人です。ナットはとにかく野田さんの作品をよく知っています。ニコンは演出力が抜きん出ている。ダムケンは外国の作品をタイらしい芝居につくり上げる翻案に長けています。みんな優秀な役者であり、演出家です。ニコンが演出しますが、ナットもダムケンも役者として参加しています。出演者はBTNのメンバーからワークショップをして私たちのほうで選びました。作品も、野田さんの作品のプロットを7作品ほど訳してもらい、その中から自分たちで『農業少女』を選びました。タイとの共通点が一番多いと感じたからです。

──『農業少女』は現代演劇のスタイルですが、プラディットさんが演出されるマカムポン劇団の『赤鬼』は伝統的な大衆喜劇リケエのスタイルです。どうしてリケエで上演しようと思ったのですか。
 リケエはタイの社会と共に発展してきた芸能です。タイの伝統を守りながらも時代遅れにならずにその時代に生きている数少ない芸能なのです。野田さんの作品を自分の手で演出するならこの手法しかないと、高萩さんからお話をいただいたときにすぐに思いました。
 リケエはマレー、すなわちイスラムの文化に起源をもった芸能です。だから、タイでもマレー系の人たちが多く住む南タイを舞台にした作品にするとピッタリくると思いました。そうそう、今回は日メコン交流年の記念事業とのことだったので、メコン川沿いの村を舞台にすることも考えたのですが、そうすると流れていったビンはもう戻ってこないんですよね(笑)。だから、やはり南タイの海辺の村を舞台に、タイ人にとっても異国情緒を感じるような音楽を使った作品にしようと考えました。
 
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