The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Contents
Presenter Interview
CINARS, over a quarter of a century  The vision and accomplishments of founder Alain Pare
CINARS四半世紀の歩み 創設者アラン・パレの挑戦
*2 IETM
ベルギーを拠点とするコンテンポラリー・パフォーミング・アーツの国際ネットワーク。「Informal European Theatre Meeting」として1981年に始まり、2005年に「International Network for Contemporary Performing Arts」に改称。

*3 ISPA
International Society for Performing Arts は、舞台芸術専門家たちのネットワークの構築を目的に、1949年に設立された会員制の非営利国際組織。





































































*4
「ケベック州芸術人文評議会」と訳されている州立公社

*5
文化企業開発会社
人が出会い、信頼関係を築く「場」としてのプラットフォーム

──先ほどから舞台芸術の「マーケット」ではなく、「プラットフォーム」という言葉を使われていますね。

 「プラットフォーム」という言葉が実はキーワードで、よくみんなで議論をしています。今の時代、私たちがやっていることを表現するのに、「マーケット」という言葉は適さなくなってきていて、「ネットワーキング」または「ミーティング」という言葉のほうがより適切だと思います。舞台芸術業界の関係者たちが、様々な国からジャンルを超えて集まり、互いに会って情報を交換する、これまで蓄積してきた知識やノウハウをシェアする、互いの国の新しい芸術家とその表現を発見する、といったことを目的としたイベントというか「場」なのですから。
 シナールやTPAM(東京芸術見本市)といったプラットフォームの他にも、業界関係者が一堂に会するコングレス(Congress)として、IETM(*2)やISPA(*3)などがあり、各地でアーティストや作品、アート・フェスティバル等に関する情報の交換などを行っています。このような集まりで私たちがやっていることは「売り/買い」という単純なことではありません。舞台芸術をプロモートし、上演するという私たちの仕事には、長期のプロセスが必要です。フォローアップのため、お互いに知り合うために、何度もこのような場に行かなければなりません。信頼関係、人間関係を築かなければなりません。そうした意味合いを込めて、特にここ2、3年、シナールでは「マーケット」という言葉は使わず、「プラットフォーム」という言葉を使うようにしていますし、してもらっています。人が出会い、知り合う「窓口」、「場」という認識です。

──実際に、上演アーティストや演目の決定、契約に関しても、そのような人と人との繋がりや信頼関係の上に成り立っているといえますか。
 はい。今はまさにそうした時代だといえます。インターネットやEメールがあっても、離れていてはやはりできないことです。生身のコンタクトが重要です。あるプレゼンターは私にこう言いました。「2週間ほどの間にDVDやプロモーション冊子が合計50枚くらい送られてくる。私にそれを全部見ている時間があるはずはない。部屋の隅に積み上げられて、結局ゴミ箱に行ってしまう。アーティストを選ぶ時は、まず自分と人間同士のリレーションがあるエージェントやカンパニーを考える。彼らの作品を実際に観に行き、またリレーションを深める」。酷いといえば酷いかもしれないけれど、理解できます。競争はとても激しいのです。
 以前は、送られてきたDVDを観て、アーティストやエージェントにアプローチするというケースも比較的多くあったようですが、そのやり方は間違いだったと思います。今では、私はDVDやCDを名刺のように考えてます。名刺の場合と同じように、本当に“わかる”ためには、実際にその人に会って、話をしなければなりません。人間同士が何度も顔を合わせ、より包括的な話、例えば新しいダンスのトレンドがどうなっているとか、アーティストの直面している問題などを話し合うことが大事です。観客や一般の人々が何を欲しているかも話します。「これは見なければ、見せなければ」と実際に肌で感じることが必要です。

──パレさんも、ほとんど毎年のようにTPAMにいらしてますね。
 日本とのコンタクト、緊密なリレーションを持ち続けるためで、それは日本から多くの関係者にシナールに参加してもらうことに結びつきます。そしてまた、日本のアーティストのトレンドや成熟の過程を見ていくことも重要だと思っています。現地で現状を見聞きし、こちらの状況を伝える。そのためには、当然TPAMに、何度も参加しなければなりません。その長いプロセスを経て、プラットフォーム同士の連携、パートナーシップも育っていきます。
 ですから、「一度はTPAMに行こうと思うが」というような相談を受けると、「1回だけ行くのなら止めたほうがいい」と言います。お金、時間、労力の無駄です。少なくとも3回、4回、5回と行ってこそ、日本で行われている創造活動が理解できます。もちろん、日本以外の国についても同じです。
 私は、日本に来たら日本の独自の文化が反映された作品を観たいといつも思います。アメリカ文化のコピーなどには興味がありません。日本人は日本人でいてほしい。「これは、日本以外のどこにもない」というものが欲しい。独自性があり、プロフェッショナルでもあるものを期待しています。私が日本で見てきたアーティストは若手が多いですが、10年間見続けてきて、確かに成長し、成熟してきているのがわかります。

ケベック州が支えてきたシナール

──シナールを支えてきたケベック州政府の芸術支援についてお話しいただけますか。

 ケベック州政府は、1992年に「ケベックの文化政策、私たちの文化、私たちの将来」という150ページにわたる文化政策に関する文書を発表しました。そこに書かれていた基本的な考え方は、今も変わりません。ケベックの芸術と文化の発展は、国際マーケット抜きには考えられないということです。一つの芸術作品が海外に出ることによって、2年、3年と上演される“生命”を持つことになります。
 同年、州の文化省は、CALQ(ケベック・アーツ・カウンシル)(*4)を設立しました。海外ツアーを行う舞台芸術のアーティストもシナールも、CALQから支援を受けています。また、95年にはもう一つの州立文化公社であるSODEC(*5)が設立され、映像、工芸、録音、出版などを支援の主たる対象としています。SODECが商業的文化芸術産業のサポート、CALQが非営利の文化芸術団体の支援をしているという役割分担です。

──カナダ連邦政府レベルでの支援はどうですか。
 ケベック州に倣って連邦政府は15年ほど前から芸術支援を始めました。しかし、昨年から新政府になり、芸術への予算が削減され始めました。そのため、連邦政府の文化大臣とオタワで会見し、「芸術文化業界は、連邦政府が投資する1カナダドルに対し5.5カナダドルをもたらしている(助成金などの政府の補助が5.5倍の政府収入になる)」という調査結果を報告しました。仕事をつくり、雇用を生んで経済効果をもたらし、しかもカナダのイメージアップをしてカナダという国をプロモートしている。例えば、カナダのアーティストの海外公演の場合でも、航空会社はエア・カナダで、航空券も国内で購入します。海外公演の収入もカナダ国内に戻って来るわけなので、海外で使ってくるのは、宿泊代とレストランでの食事だけだと説明しました。大臣は、そのような経済効果については、算出法に関しても結果に関しても知らなかったと、随分感心していました。芸術文化は海外を含む他の地域からの観光客も引き寄せること、ビジネスをつくること、それを論証する必要があります。
 
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