The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Contents
Presenter Interview
CINARS, over a quarter of a century  The vision and accomplishments of founder Alain Pare
CINARS四半世紀の歩み 創設者アラン・パレの挑戦




































































*6 Performing Arts Market Seoul
2005年に始まった韓国ソウルの芸術見本市。KAMS(Korea Arts Management Service:芸術経営支援センター)により運営されている。

*7 Korea Arts Management Service
韓国政府文化体育館観光部傘下の芸術経営支援センター。2006年に発足。
──政府の芸術文化への支援カットなどに対処するための「アーツ・アドボカシー」もシナールでやっているのですか。「投資が5.5倍のリターンになる」というような明確な数字を提示することは、ポリシーメーカーに対して有効だと思います。
 芸術の経済効果に関するリサーチは、シナール自体が専門家の助けを借りて行いました。これは、カナダ全域に対して行ったもので、約2,500の芸術団体やマネージメントを対象に調査をし、35%の回答を得ることができました。3月末に、この新しい調査の結果を政府に送りました。カットの影響はこのアンケート調査にも顕著に出ていて、多くのカナダのカンパニーが海外ツアーをキャンセルし、収入を失ったことがわかりました。例外は、州レベルでカットがなかったケベック州のアーティストだけです。
 私は、文化大臣に「支援を止めるということは、せっかく築いてきたものを台無しにします。また初めから立て直さなければならなくなります」と訴えました。例えば、シナールがTPAMに毎年参加する理由は何かというと、日本の人たち、アーティストやプレゼンターと、リンク、関係を築いていくためです。何度も言うように、長期的な投資、計画の一部なのです。だからもし、ある年、私たちが参加しないということになったら、次の年に来た時に失ったものを取り返さなければならない。それがとても困難だということが、新しい政権になって2年経つのですが、なかなか理解してもらえません。
 そして、バンクーバーでオリンピックを開催したために、多くの文化のための資金がスポーツに移されてしまいました。前のオリンピックでカナダ勢は振るわなかったため、政府は何億という資金をウィンタースポーツとアスリートに投資しました。オリンピックが終わったので、カットした資金を文化に戻してくれるよう、期待しているのですが…。新聞記事によると、開催地であるブリティッシュ・コロンビア州は巨額の負債を抱えてしまったとのことです。同州の文化予算はなんと、95%カットされたのですよ。想像を絶するひどさです。そしてその負債を返済するには5年、10年とかかる。それを文化セクター、アーティストも背負わなければならないのです。

──NPO芸術業界に携わる人は、自分の都市がオリンピックを招聘するという時、諸手を挙げて賛成しないように注意しなければなりませんね。
 そうですよ。モントリオールでも76年に夏季オリンピックを開催しましたが、負債を返済するのに20年、いや25年もかかりましたからね。国の知名度を上げるには良いかもしれませんが。それでまた今回も連邦政府は文化予算をカットするのではないかととても心配しています。でも、地元ケベック州にとっては幸いなことに、州政府は、連邦政府からの支援がなくても、ケベック州のアーティストへの支援は続ける、と言ってくれています。他の州の芸術文化業界は非常に苦しい状態に陥っています。政府支援カットの悪影響は、新しい創造活動やツアーをはじめ、様々な面で大きく、長く続くでしょう。シナールとしては、もちろんケベック州以外のカナダのアーティストもサポートし、プロモートしたいですが、各州からの援助なしでは非常に難しくなります。

北京に生まれる新たなプラットフォーム

──ところで、今度は北京でもアーツマーケットが始まると聞きました。ペレさんは、アドバイザーになられそうですが、上海にもアーツマーケットがありますし、そことの関わりも含めて、どのようなビジョンをお持ちですか。

 早耳ですね(笑)。中国政府から依頼を受けて、北京の新しいアーツマーケットのコンサルタントをします。大きな方向としては、最初から国際的なものを目指します。現在、上海のパフォーミングアートフェアは、国内の舞台芸術に焦点が絞られすぎていると私は思います。中国政府の「中国の舞台芸術を海外にプロモートしたい」という意向を反映しているからです。ただ問題は、日本や韓国をはじめ、同様のマーケットを開催している他の国にはストラクチャーがあって、劇場施設のマネージメントやアーツフェスティバルのノウハウがありますが、中国は随分事情が違います。まずは、ストラクチャーをつくること、ノウハウの伝達、トレーニングが必要ではないかと感じています。その反面、「私たち流」に変えることへの懸念、「変えたくない」という思いもあります。

──具体的に、中国はどこが大きく違うのですか?
 例えば、ケベックのアーティストを中国にツアーしようとして、アーティストフィーに話が及んだ時、「なぜ、フィーを払わなければならないのですか?」と聞かれました。中国では、バレエやオーケストラ、オペラなどの芸術家は国から給与をもらっている国家公務員だからです。月曜から金曜まで、決まった時間にリハーサルをして、年間200公演こなしても、10公演しかなくても、給与は同じです。私は、中国におけるアーティストの非常に安定した経済基盤を、変えなければならないなどとは思いません。そこが難しいのです。
 それから、中国の舞台芸術は伝統的なものがほとんどですが、多くのプレゼンターは、コンテンポラリーな、そしてオリジナルな芸術表現を求めています。ですので、例えば、今私が提案しうるアイデアの一つは、他の国から振付家を呼んで来て、伝統的なトレーニングを受けたダンサーと新しいコンテンポラリーな作品を創るというようなことです。それに中国の若い世代は、資金力もあり、教育も受け、海外にも出て、もちろんインターネットで育っていますから、「新しいものを観たい」と思っています。彼らは両親たちのようにバレエやオペラに行きたいとは思っていません。
 でも彼らの求めているものはまだ中国にはない。基本からつくる必要があるので、非常に時間のかかる、長いプロセスの話になります。例えば、日本や韓国から振付家を呼んで新しいダンスを共同制作するとか。演劇や音楽でも、同様に共同制作の可能性を探ることになると思います。そういうものが生まれてこそ、カナダからでも、日本からでも、諸外国のプレゼンターが中国のアーツマーケットで、オリジナルな他の国にはないものを見つけに行くという構図が成り立つようになると思います。
 私は、「まず、貴方たちにとってどうするのが一番良いかを話し合いましょう」という姿勢でいます。そして、話し合った後、決めるのは彼らです。自分たちの結論でないといけないと思います。2005年には、韓国でPAMS(ソウル舞台芸術見本市)(*6)を立ち上げましたが、その際は2週間ソウルに滞在し、スタッフのトレーニングを行いました。その後、韓国のアーティストをプロモートする為の組織KAMS(芸術経営支援センター)(*7)もつくりました。その際、シナールのモデルを使いましたが、私は「自分流に、自分の国に合うようにアジャストしていくことが大切だ」と一貫して言ってきました。アジアでは、欧米型ではなく、アジア流にアレンジすることが大切だと思います。
 
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