The Japan Foundation
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Japanese Drama Database
Japanese Title: 冬眠まんざい
English Title: The Comedy Duo in Hibernation
Author: 秋浜 悟史
Author's Profile: 1934年、岩手県生まれ。早稲田大学文学部演劇科卒業。在学中の1956年に「英雄たち」を発表(同年「自由舞台」初演)。卒業後、岩波映画に8年間勤務。1962年から1973年まで劇団三十人会に参加し、「ほらんばか」(1960年発表1966年初演)、「冬眠まんざい」(1965年発表1966年初演)、「しらけおばけ」(1967年発表同年初演)等を創作。1966年に「ほらんばか」で第1回の紀伊國屋演劇賞(個人賞)を受賞。1969年には「幼児たちの後の祭り」(1968年発表同年初演)で、「新劇」岸田戯曲賞を受賞した。豊饒なエロスや、峻厳な「不条理」の世界を、方言や土俗的世界を描写するオリジナルな手法を基盤にして豊かに現出させる。
1979年から大阪芸大舞台芸術科で教鞭をとり、また1994年からは国内初の県立劇団である兵庫県立ピッコロ劇団の初代代表として、演劇教育を旨に多くの若者の指導にあたり、演出家としても活躍する。1997年にはピッコロ劇団の舞台成果で紀伊國屋演劇賞(団体賞)と芸術祭賞(演劇部門優秀賞)を受賞。
First Performance:   1966
Performance time:  
Acts / Scenes: 3
Cast: 2人(男1・女1)


雪に降り籠められた山奥の一軒家で、人の来るのを待ち続ける男女ふたりの芝居。作者は地方語によって山間の暮らしを活写しながら、独自のファンタジックな世界を展開している。この世における根源的な「不条理」を描く作品。

吹雪が土間を洗う山間の百姓家。ユキが鴨居に縄をかけて首を吊ろうとしている。トトはユキの踏み台の役をつとめているのだが、今日もまたユキは首吊りを中止。どうやらこの二人の「首吊りごっこ」は日課になっているらしい。この「ごっこ」が終わると、トトは3年前に家を出たまま戻らない勝子の手紙を読み始める。そこには「必ず何時かは戻るつもり」と書かれているのだが、いっこうに戻って来る気配はない。勝子が出ていって以来3年間、ずっと雪は降り続き、もはやこの家と外界とをつなぐ道も途絶えているのだがトトはこの家でひたすら勝子の言葉を信じて待っているのだ。一方、ユキはユキで駆け落ちを約束したはずの太郎が、自分を迎えに来てくれる日を待ち続けている。この閉ざされた世界のなかで二人は「ごっこ」で繋がり、「遊び」を繰り返して生き続けている。そしてもはやお互いの身体の輪郭や意識さえも曖昧になってしまっているのか、ユキはトトの酒の肴にと、大根漬けを刻みながら、自分の腕も一緒に切り刻んでしまう。しかし腕はいつのまにか再生しているのだ。こうして二人の生活はまた繰り返されていく。

時おり誰かが戸を叩くような音が聞こえてくると、トトは勝子だと言い、ユキは太郎だと言い張る。しかし実際には誰もやって来ない。そのうちに風が戸を打つ音が盆踊りのにぎやかな音楽と重なって聞こえてくる。トトは歌い、ユキは躍り始めるのだが、それも止み、再び静寂が訪れる。

こうして待ち続け、雪は降り続き、二十年という歳月がたつ。今日もまた日課の「首吊り」が始まる。ところが、二十年の間にトトの身体は衰えて、もはやユキの重みに耐えられなくなっていた。ユキの首に縄が食い込み、宙づりになり、ついに「首吊り」が現実のものとなったかに見えたその時、鴨居が折れて今日の「首吊りごっこ」が終わる。が、その直後、背後から雪崩がこの家を押し潰し、ふたりの世界そのものが雪の下へ消えていく。
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