The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Japanese Drama Database
Japanese Title: タンゴ・冬の終わりに
English Title: Tango at the End of Winter
Author: 清水 邦夫
Author's Profile: 劇作家、演出家。1936年新潟生まれ。早稲田大学文学部卒業。美術科から演劇科へ転科した1958年、処女戯曲「署名人」(初演は1960年)がテアトロ戯曲賞と早稲田演劇賞を受賞。大学卒業と同時に岩波映画製作所に入り、退社までの5年間映画のシナリオを手がける。
1972年、蜷川幸雄(にながわゆきお)らと桜社(さくらしゃ)を結成。1974年には「ぼくらが非情の大河をくだる時」で第18回岸田戯曲賞受賞。同年桜社解散。1976年、演劇企画グループ木冬社(もくとうしゃ)を結成(現、演劇企画木冬社)。第1回公演の「夜よおれを叫びと逆毛で充(みた)す青春の夜よ」で第11回紀伊国屋演劇賞個人賞受賞。以降、「エレジー」で第35回読売文学賞戯曲賞(1983年)、「わが夢にみた青春の友」で第29回紀伊国屋演劇賞団体賞(1994年)など、受賞多数。2002年、紫綬褒章授章。
現在、多摩美術大学造形表現学部映像演劇学科教授。日本劇作家協会理事。
First Performance:   1984年。1991年には『TANGO AT THE END OF WINTER』として、蜷川幸雄の演出でイギリス初演。
Performance time:  
Acts / Scenes: 全7幕
Cast: 7人(男3・女4)ほか、幻の人々数人。


現実を拒否し、幻の美に殉じた元役者と、彼をめぐる人々を描く。清村盛(きよむらせい)はかつて、才能にあふれ注目を浴びる役者だったが、三年前に全てを捨てて故郷にひきこもっている。栄光の日々を捨てきれない盛は次第に精神を病んでゆき、今では自分が少年時代に盗んだ孔雀の剥製の幻影を追う毎日である。盛の生家は、かつて観客がひしめく映画館だったが、今は荒れ果て、近々取壊しが決まっている。そこにある日、三年前まで盛の役者仲間であった女優、名和水尾(なわみずお)とその夫、連(れん)が訪ねてくる。盛と一時恋愛関係にあった水尾は今も盛を慕っているが、盛は全てをすっかり忘れている。実は、水尾を呼び出したのは盛の妻ぎんで、若く美しい水尾と再会させて盛を刺激し、かつてのように甦らせようというもくろみだった。さらに三年前の二人の恋愛も、盛を魅力的な役者にするためにぎんが仕組んだこととわかる。しかし実は、盛は本心から水尾を愛しており、全てを忘れているはずの盛との会話の中で水尾もはっきりとそれを悟る。水尾は別れ際に、革命と自由を謳った芝居のセリフを諳んじ、盛と手を組んでタンゴを踊る。踊りがクライマックスに達した時、盛はそこに現れた水尾の夫に水尾を託し、自分は妻ぎんの腕に倒れ込む。しかしその後、盛はひどく錯乱し、とうとう孔雀を捕まえたと言って座布団を抱え込んでいる。その姿を目の当たりにした妻ぎんは、これまでずっと夫の全てを受入れてきたが、もはやついていけないとその場を去る。一方水尾は、盛に現実と幻影の違いをはっきり教えようと、盛の手から座布団を奪い取る。それに逆上した盛は、「オセロー」のセリフを言いながら水尾を絞め殺す。そして盛はかつての引退公演さながら、幻の観客に向ってしゃべりはじめる。何度も言葉につまりながら、やがてあの革命の芝居を思い出し、幻の相手とタンゴを踊る盛に、連がナイフで切りかかる。なおも盛はダンスを続けるがついに崩れ落ち、その瞬間孔雀がひらめく。

最後はこの地を去り行く妻ぎんの述懐。ぎんは、いまだに夫のみる幻を肯定するべきだったのかどうか考えあぐねているが、自分にはもう付き合えなくなっていたと一人つぶやく。廃墟となった映画館に、かつての観客たちが押寄せるようになだれ込み、幕。
TOP