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子供の事情 子供の事情
『子供の事情』
(2017年7月8日〜8月6日/新国立劇場 中劇場)
撮影:青木司
Data
[初演年]2017年
[上演時間]2時間20分
[幕・場数]二幕四場
[キャスト]10名(男5名・女5名)
*生演奏のピアニスト1名
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2017.10.25
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三谷幸喜『子供の事情』 
 メディアを超えて活躍する作家・三谷幸喜の最新戯曲。舞台は、自身が小学生だった昭和40年代半ばの楠小学校4年3組。登場人物はあだ名で呼び合う同級生のみ。作家の分身にも思える語り部の生徒と、8人の個性的な同級生たちがクラスの中での役割をめぐって社会の縮図のような騒動を展開。初演では、全員大人の俳優陣が演じ、ピアノ生演奏による歌も多用され、誰の心にも残る背伸びした子供時代の風景を生き生きと描き出した。
 第1幕第1場。昭和46(1971)年4月。世田谷区立楠小学校4年3組の教室では、生徒たちが好き好きに放課後を過ごしている。客席に向かい語り出した男子生徒は自身を「三谷幸喜」と名乗り、クラスメイトたちをあだ名で紹介していく。

 勉強家だが成績の悪いホリさん、体型がドテっとしている恐竜オタクのドテ、お釈迦様の絵に似た問題児ゴータマ、その参謀で老け顔のジゾウ、女子ながらリーダー格のアニキ、人の言葉や動作を繰り返すリピート。語り部は彼らからホジョリンと呼ばれている。いまだに自転車に補助輪をつけているからだ。

 そこに転校生・片桐丈と先生の手下である学級委員長の女生徒ソウリが現れる。ソウリは放課後教室に居残っている彼らが“スーパーエイト”と呼ばれていると紹介。ジョーと呼ばれることになった転校生は、家や家族のことを訊かれてもはぐらかすが、教室で騒ぎが起こると機転を利かせ、仲裁役を買って出る。スーパーエイトの8人目、人気子役のヒメが現れても動揺する気配もない。その行動には何か思惑があるようだった。

 幕間芝居として、ドテによる恐竜の体色に関する見解が披露される。

 第2場。7月の放課後。4年3組では組ごとに演し物を競い合う“お楽しみ会”の話し合いが行われており、「芝居をやる」ことになる。

 事前にソウリに根回しされていたホジョリンが「マッチ売りの少女」を翻案した「スイカ売りの少女」を提案。ヒメを主役の少女、相手役の少年はやりたがりのホリさんに決まるが、台本がまだなかったため即興での稽古がはじまる。

 しかし、実力のないホリさんは外され、少年役はアニキに交代。だが歌い踊るシーンに突如割り込んだジョーの大活躍により、アニキは役を追われる。

 放課後、ジョーは「クラスに犯罪者の家族がいる」という秘密を暴露するが、アニキとホジョリンに制止される。そのうえ、役を下ろされ気弱になっているアニキに「人から頼られるにはワルの要素も必要だ」と揺さぶりをかける。

 一方、ゴータマとジゾウは明日の給食の揚げパンを他のクラスから奪う謀議を図っていた。それを聞きつけたジョーは自分とアニキも計画に加えるよう迫る。計画を話し合う中で、奪ったパンを売りさばくと知ったアニキは態度を一変。様子を見に来たソウリが計画に気づくよう仕向けたことで、アニキは仲間の信頼を失う。

 傷つくアニキを気遣うホジョリン、同情を装うジョー。だがアニキが去ると、ジョーは彼女の座を奪い、クラスの実権を握るための策略だったと不敵に笑う。

 第2幕第1場。11月の放課後。ジョーはクラスのリーダーになっていたが、彼の縮れ毛を指してホジョリンが贈った“チンゲさん”というあだ名は拒否する。

 漢字テストの日。常に全科目満点のヒメが凡ミスで95点を採る。「両親さえ騙せれば」とジョーに答案の偽装を頼むヒメ。ジョーはゴータマの悪知恵を借る代わりに、彼女の希望通りの席替えをするよう頼まれる。

 同じ日、ドテが学校近くの工事現場で恐竜の歯の化石を発見し、ドテは一躍マスコミの寵児になる。しかし、その化石はジョーとゴータマが埋めたものだった。

 ジョーはリピートに3学期の学級委員長に立候補するよう強制した挙句、ソウリに委員長でいたければ席替えをしろと強要し、まんまと席替えを実現する。

 ゴータマは席替えで好意を寄せていたホジョリンの隣の席になりたかったのだ。二人で話すうち、ゴータマは自分が悪戯をするのは「この世からいなくなる怖さを紛らわすため」と告白する。「怖さを越える手伝いをするから」と、悪事を諌めるホジョリン。

 ゴータマの答案偽装の方法とは、100点満点をとったホリさんとヒメの答案の名前を書き替えるというものだった。ジョーがヒメとホリさんを説得している最中、改心したゴータマがソウリと現れる。ヒメは「全て自分が悪い」と演技過剰の謝罪をした挙句、帰宅途中に川に落ち、テスト用紙ごと鞄を流す。

 幕間芝居として、リピートが3学期の学級委員長選挙で勝利する寸劇が演じられる。

 第2場。翌年3月の放課後。学校の周囲にマスコミが集まっているという。4年前に起きた「事件」を取材するためだった。化石発見が捏造だったことがわかり、ドテは職員室に呼ばれている。

 新学級委員長のリピートに連れられドテが教室に戻ってくる。変わらぬ様子で、恐竜の薀蓄をつぶやき続けるドテ。見かねたホジョリンは、ゴータマに自分の悪戯だったと告白するよう促す。

 マスコミが追いかけているのは、ホリさんの兄が父を殺した事件だった。「先に進むため記者の前を堂々と通って帰ろう」と焚きつけるジョー。「誰も踏み込むべきではない」と必死で止めるアニキ。

 二人が教室を出ようとした時、アニキはジョーの正体をぶちまける。マスコミにホリさんの所在を通報したこと、前の学校では大人しくていつも一人の“かわいそうな子”だったこと、ヒメの大ファンなこと、あだ名が“チンゲさん”だったこと。

 陥落したジョーを前に、ゴータマは全てを告白するため職員室へ向かう。ドテは記者たちが「恐竜の話を聞きたがっている」と突進していく。その隙にホリさんを裏口から連れ出すよう、ジゾウに指示するアニキ。

 戻ったゴータマはジョーにも謝罪するよう迫る。泣きじゃくるジョーをアニキは優しく諭し、リピートが彼を職員室へと連れていく。

 終幕。ホジョリンは小学校卒業と共に福岡に引っ越し、クラスメイトのその後は知らないと語る。恐竜の話を続けるドテの声とともに、誰もが記憶の片隅に持ち続けている放課後の教室の風景がフェードアウトしていく。

プロフィール:
劇作家、演出家。1961年、東京都出身。日本大学芸術学部演劇学科卒業。大学在学中の83年に、学友らと劇団「東京サンシャインボーイズ」を結成する。コメディに強いこだわりを持ち、明確なキャラクター設定を施された登場人物による、ウェルメイド・プレイを活動当初から多数執筆。舞台以外にテレビドラマのシナリオを多数執筆する他、裁判員制度実施以前に、陪審員制度を導入した日本を仮定した『12人の優しい日本人』(90年初演)、太平洋戦争下での軽演劇の作家と検閲官の攻防を描いた『笑の大学』(96年初演。2007年にはリチャード・ハリス脚色の英訳版『The Last Laugh』での英・日公演も実施)、幕末の英雄・坂本龍馬の死後に遺された未亡人を巡る人情劇『竜馬の妻とその夫と愛人』(2000年初演)など映画化された戯曲も多い。自身でも劇団時代の戯曲でラジオドラマの収録現場での騒動を描いたコメディ『ラヂオの時間』(93年初演)を映画化し、97年に監督デビュー。以降は映画監督としても作品を発表している。劇団は97年の『東京サンシャインボーイズの「罠」』公演をもって、30年間の活動休止中。『笑の大学』で第4回読売演劇大賞最優秀作品賞、99年『マトリョーシカ』で第3回鶴屋南北戯曲賞、00年に初のミュージカル『オケピ!』で第45回岸田國士戯曲賞、08年に第7回朝日舞台芸術賞 秋元松代賞など受賞歴も多い。
 
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