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Japanese Drama Database
Japanese Title: マリアの首
English Title: The Head of Mary
Author: 田中 千禾夫
Author's Profile: 1905年、長崎生まれ。1930年慶応大学仏文学科卒業。1932年に創刊された岸田國士らの『劇作』の同人となり、戯曲を書き始める。1933年に築地座により「おふくろ」が初演された。その後、文学座創立に参加したが1944年に退団。第二次大戦後に「ぽーぶる・きくた」(1946年)、「雲の涯」(1947年)、「修羅」(1948年)等の戯曲を続けて発表する。1951年に俳優座に所属。1954年には「観念劇」と言われる「教育」を上演(作・演出)して翌年読売文学賞を受賞。続いて「肥前風土記」(1956年)、「マリアの首」(1959年)、「千鳥」(同年)、「8段」(1960年)等の作品が発表された。長崎の原爆をテーマにした「マリアの首」で岸田演劇賞、芸術選奨を受賞。
1966年からは桐朋学園の演劇科専任教授をつとめ、実験的な戯曲作品を続けて発表した。1981年に芸術院会員となる。1995年没。
First Performance:   1959
Performance time:  
Acts / Scenes: 4幕9場
Cast: 19人(男11・女8)


長崎にある合同市場の二階では今日も鹿が娼婦をしている。被爆によって顔の左に大きなケロイドがあり、夜の仕事の時には黒い耳包帯で隠している。一階で忍は、夫である桃園が書いた詩集と薬を売りながら客引きをしている。原爆投下の日に次五郎に犯され、母の形見の指輪をとられ、白鞘の短刀を無理矢理渡された忍は、次五郎を見つけて復讐するつもりだ。そこへ忍の詩に救われて感謝しているという第二の男がやってきた。忍は雪が積もった夜に浦上天主堂へ来るように伝える。鹿と忍は秘密裏に、原爆で崩れた浦上天主堂の壊れたマリア像の残骸を拾い集めて来ては娼婦部屋に隠している。仲間の第三の男が、盗んできた片腕をつなぎ合わせると後は首を残すのみとなった。原爆の傷跡である浦上天主堂の保存について教会や市議会ではもめており、切支丹である彼らは何とかしてマリア像だけでもそのまま自分たちの手で残したいと考えているのである。

昼間は坂本病院の看護婦として働いている忍と鹿。そこへはケロイドのある鹿をアメリカへ連れて行って大勢の目にさらしたいと懇願する矢張が入院している。階下では偶然にも忍が探し続けていた次五郎が手術を受けていた。焼け跡で忍の指輪をかすめとり、それを元手にして闇市のボスとなったのだった。自分の罪に気付いて次五郎は自殺し、次五郎が死んでも心が自由になれないことを忍は知る。

雪が積もった晩、浦上天主堂にはまず鹿がやってくる。雪をかぶっているマリアの首は忍従に耐えた庶民の母の顔で、顔には鹿と同様のケロイドがある。ロザリオを胸に抱いて自分の罪の許しを請う鹿を「マリアの首」は大らかな母親が子供に接するように迎える。忍と第二の男、第三の男もやってきて四人は力を合わせてマリアの首を運ぼうとする。しかし、風呂敷に包もうとしてもマリアの首は重くてなかなか動かないのだった。
原爆の悲惨さ、人間の原罪、母性礼賛など、長崎出身のキリスト者である作者の思いを凝縮した代表作。
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